初任者研修 現場からの報告(その2)

初任者研修の現場から報告 第2弾です

 昨年、学級の生徒が2名という状況での初任研を担当した。

 初任者も私も、極めて少ない人数の学級で、生徒を「主体的対話的で深い学び」に導くにはどうしたらよいか、悩んだ。

 「せめて、10人、20人の学級だったら」ということは言ってはいけないだろうが、つい口をついてしまう私だった。

 この初任者の授業が変わったのは、初任研が始まってから半年以上も経った、指導主事訪問をきっかけにしてであった(この日は、私は担当の日ではなかったので、その学校では勤務していなかった。)。この授業へ向けて、彼女は、多くの指導技術を注ぎ込み、細かなシナリオともいうべき細案をノートに準備し、授業に臨んだ。しかし、初任者は「失敗した」と自覚した。

 私は、初任研の日に指導主事訪問の振り返りを一緒に行った。

初任者は緊張感や、細案どおりにいかないと無理やり軌道修正しようとして誘導してしまったことなどを、失敗の要因に挙げていた。

 「緊張感」は、どうしようもないが、細案どおりいかないという焦りが、緊張感を高めたのかもしれない。

そして、授業では、初任者の働きかけの後に、生徒にどれくらいの時間を取ったかを聞いた。以前、ビデオで自分の授業を取って振り返りをした時と比べると、多少は長くなったが、それほど多くの時間を与えていないことが分かった。

これも以前から、話していたことだが、生徒による、考える時間に差があることを話した。

その時間が十分でない中で、つまり、生徒が考えている途中で、先生が働きかけて、生徒の思考を混乱させたのではないかということを伝えた。

また、無意識のうちに、早く出来た生徒を称賛することになっていなかったかも気になった。緊張しているなら、自分の予定したところに行きついた生徒の反応にほっとしてしまうからだ。

実は、2人で先生との縦の関係だけで授業をすると、競争的な学習になっていくことを、感じていた。一人を誉めると、一人がへこむのである。

私の話に、次のような反応があった。

「教えるのをもっと我慢しなければならないと思いました。」

これは、初任者の授業を変える、大きな契機となった。

私は、「質問づくり」の授業を提案した。

これを校内研究で実践した。

初任者は、生徒が自主的に動いたことに感動していた。二人が協働的な学習を行ったのだ。若い先生が多い学校だったが、初任者の授業に興味津々だった。教頭先生は、「このまま、(どこかの公の)研究会の授業提案に持って行けるくらいだ」と絶賛した。

半年以上、話し続けたことが、自信を持って臨んだ授業の失敗という、(初任者にとって)衝撃的な出来事で変化したことが、ちょっと悔しかった。そして、1対1で行う初任者研修の限界を感じたことでもあった。

また。授業改善の方策にしても、私からの提案が功を奏した形だった。(誘導したのかもしれないと、強く思う。)

生徒の自主的な学習を導くことができたのだが、教師のセルフ・エデュケーションに至ったか疑問である。

でも、初任者の自信になったから、良かったかな。