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アクティブ・ラーニング日記46 2017.2.2 三浦二三夫 発
ドリル学習で倫理観を鍛える
3学期に入り、私が担当する週1回の2年生LA国語は、同訓異字、同音異義語、類義語、対義語など、漢字のドリル学習が続いている。
ドリル学習はアクティブ・ラーニングに向いていないとか、『学び合い』ができないとか、というイメージが強いと思う。しかし、『学び合い』を続けることで、ドリル学習の時間でさえ、社会的な能力や倫理的な能力を高める場になる。
この日のクラスのSN君はなかなか授業に参加したがらない生徒である。ひどいときは、1コマの間、机に顔を突っ伏したまま過ごすことがある。3学期に入ってから、ドリル学習が続き、彼の状態は加速した。クラスも全員クリアもできない時間が2回ほど続いた。
そして、今日(2月2日)、ちょっとした前進が起きた。
いつものように、突っ伏していたSN君が終了10分前に、鉛筆を握り、ドリルを埋め始めたのであった。
ここ、2~3時間TR君が、後ろの席から、ちょんちょんとSN君の背中をつついている姿があった。時には近寄って様子をうかがっていることもあった。その動きをTR君は今日も続けていた。
今日は、さらに新たな動きが加わった。RNさんとMNさんが、働きかけたのである。彼女たちがやり終えたプリントを、SN君の前に差し出したのである。「ちょっとあんた、これをやりなさいよ」という感じであった。
それに反応して、SN君はむくりと顔を上げ、プリントを埋め始めた。
彼は、結局、課題をクリアした。
このクラスには、前の時間「勇気を呼び起こす」という話をした。
アドラー心理学の受け売りなのだが、協働してことに臨むとき、共同体感覚を持っている人は、特に勇気を奮わなくても、そのコミュニティのために行うことに参加していく。しかし、勇気をくじかれた人は、参加することに足踏みし、時には、周囲を腹立たせることで目立とう試みようとする、あるいは、引きこもってしまう。こうした人を勇気づけてあげることは大切だ。
実はコミュニティから抜け出そうとする人を、戻すことができるのはコミュニティだけなのです。一人も見捨てない集団の真価が問われているのです。
だから、勇気がくじかれている人は、勇気づけてやろう。そんな話です。
何人の生徒がそのことを理解したか分かりません。
しかし、実際にSN君の周りの、数人の生徒は彼を勇気づける行動をとっています。
SN君は、ちょっとどや顔で、黒板にある自分の名札を、クリアのエリアへ移動させました。
この日、このクラスは、全員クリア達成できました。
しかも、何人かの生徒には、明らかな社会的な能力の前進が見られました。
少しばかり、感動した私でした。