アクティブ・ラーニング日記42   2016.12.8   三浦二三夫 発

体験学習の効果~しなやかに課題を乗り越える

『学び合い』ができる学習集団を育てていくこと、作っていくことが、矢本一中の本年度の研究テーマでした。『学び合い』を実践しようとすると、他の学習との関わり合いによって、良い方向に向かってほしいと思ってしまいます。これは「『学び合い』ができる集団をつくる」ことに限らず、すべての学習に言えることではあるでしょうが。

2学年の職場体験学習は生徒に大きなものをもたらしたようです。

『学び合い』の授業でも、集団に変化が生まれているように感じます。

ここ、1、2週間の2年生の各学級での取組の様子を振り返ります。

11月29日(火)

 このクラスでは予定した時間を5分も縮めて「全員クリア」を達成しました。

 グループ学習を核に進めていたのだが、その話合いの内容が面白かった。

 「和食と洋食どちらがよいか」という題材で、Bさんが「洋食がよい」という立場で根拠述べていることに対する反論を考えるのです。

グループは9つなので教師一人ですべてのグループの話合いの様子を見取ることは不可能ですし、しようとも思いません。それは、リフレクションシートでカバーしています。へたに話合いに介入して生徒の思考の流れを断ち切るのももったいありません。ともかく「聞き耳頭巾」に徹します。そして、行き詰っている生徒と学習の進んでいる生徒を繋ぐことに意を砕きます。

その中で、耳に入ってきたあるグループの話合いに面白いものがありました。

「洋食と和食の境目はどこか?」という話題になっていたのです。これは、教科書の教師用の指導書には出ていない考え方です。教科書編集者は「和食と洋食」が厳然と区別できるという前提でつくてっていることが分かります。このことは、少し教材研究をすればわかることなのですが、そうした分析を生徒もできるのだということが分かります。

以前の私なら、自分の教材研究と生徒の見解がばっちりあったので、鬼の首を取った恋持ちになり、次のような展開に持って行ったかもしれません。

「(上述の話合いの中身を取り上げて)Aのグループで境目があいまいという話合いがありました。いいところに気が付いたね。教科書ではこうしたあいまいなところがあったりするのだね。だから自分で考えるということが大事なんだよ。」

これでは、教科書を貶めるだけです。生徒が勉強の糧にしているのは教科書ですから、とどのつまりは、生徒が勉強していくかに混乱を与えることになります。

しかし、『学び合い』を進めることで、生徒の知性を信頼することが、ちょっとはできるようになったのかもしれません。生徒の話合いの進行を見守ることにしました。

さて、生徒はこのハードルをどのように乗り越えたでしょうか?

私が、聞き耳を立てていたグループは、つぎつぎに料理の名前を挙げて、これは洋食、これは和食、というふうに分類していっていました。(これはもしかして帰納法という思考法ではないか、と私は思いました。)

ほかのグループでも、同様の話合いになっているグループがいくつかありました。

(さすがに、「和食とは」「洋食とは」と定義を明確にし、それに当てはめて分類するという演繹的な思考法をとるグループはありませんでした。これは、振り返りの時間に、こうした考え方もあるのだと、私のほうから説明しました。)

そんな、話合いの中で「これは中華だよ」というのも出てきたりしています。和食と洋食が1対1で対立するものでないことにも気づいたようです。

こうそいた具体的な分類作業が実は和食や洋食のプラス面、マイナス面をとりあえず設定するという、教科書の目的に沿う考え方に近づいて行ったようです。

私のように、無碍に教科書を否定するのではなく、マイナス面を克服しながら、結論へたどり着いて行ったのです。

この過程で、次のような声がけをする生徒もいました。

「○○くんが、終わらないと全員終わらないよ。(だから、頑張ろう)」

この声に、いやいやながらも○○君は、意見をノートに書くという作業を遂行しました。

12月1日(木)

 この日のクラスでは、自分で問題を考えたり、選んだりして、その根拠を5つ考え、3人以上からサインをもらう。という課題でした。

 この際に、取組が不十分そうな人への声の掛け方が、その生徒の意欲を削がないような声掛けをしていて、柔らかいなという感じを受けました。一人一人に応じた声がけができるのだなと思いました。

 サインを求める動きでも、特徴的なものがありました。

 一つは、まだ、書き終えていない、というより、行き詰っていそうだなという生徒に、サインを求めるのです。求められた生徒は、少しでも内容に目を通します。そうすると、サインを求める行為が、他の生徒にヒントを与えるということにつながっています。

 また、信頼のおけそうな人にサインを求めるという人もいました。この生徒は、普段付き合いがなさそうな生徒にもサインを求めていました。

 また、グループの中で、サインを求めている生徒もいました。グループは同じ問題で考えているので、意見を完成したときには、お互いがその内容を了解しているので、責任を持ったサインになるのでした。

 また、5つという数はそれなりのハードルを与えるようで、多くの生徒はすんなりと5つに到達することはできないのでした。3つや4つで行き詰る生徒が多いのでした。この行き詰まりは生徒に本気の学習を促します。

 このクラスは、全員クリアできました。

12月2日(金)

 このクラスは、あと一人というところで時間になってしまいました。

 しかし、最後の一人も全く手が届かなかったというわけではなく、一つ半という感じでノートに書きながら、考えている途中でした。

 このクラスの課題は「5つの根拠から3つを選び、反論を予想し、再反論まで考える」というものでした。

 まさに、以前経験した学習を生かす学習ですが、ノートをひっくり返して思い出そうとしている生徒がいました。

 初めは、どこから手を付けようかという生徒が多かったのですが、上述の作業をする生徒が出てくると、たちまち「やる気の上昇曲線」に乗りました。

 「もう少し、やる気の切り替えが早くできると、全員クリアが出きたに違いない。次回は期待している」

 そんな話をして、授業を終えました。